近年、企業にはハラスメントへの対策が強く求められています。
パワーハラスメントについては労働施策総合推進法が、セクシャルハラスメントとマタニティハラスメントについては男女雇用機会均等法が、全ての企業に対してハラスメント防止措置を講じることを義務付けています。
また、職場におけるハラスメントは、職場の環境を害し、業務に支障を生じさせるだけでなく、人材の流出や企業への評価を下げるなどの事態も招く恐れがあります。
したがって、企業が組織として発展していくにあたって、ハラスメントを防止するための措置を講じることは必要不可欠といえます。
それでは、ハラスメント防止措置とは、具体的にはどのようなものでしょうか。
国が示す指針では、概ね以下のようなものがあります。
これらのうち、ハラスメント相談窓口を設置することは②に該当します。
ハラスメントの相談に適切に対応するために、相談の窓口を設置し、窓口の存在などを社内に周知するという措置になります。
内部通報制度とは、企業で起きている違法行為などについて、従業員等が社内に設置された相談窓口や委託先の社外相談窓口に対して通報することのできる制度です。
令和4年6月1日から施行された改正公益通報者保護法では、常時300人を超える従業員を使用する事業者に対し、内部通報制度の整備その他必要な措置をとることが義務付けられることになりました。
もっとも、従業員が300人以下の企業においても、内部通報制度を整備することにより、社内の不正や違法行為を早期に発見することができ、堅実な企業の発展に貢献することが期待できます。
また、内部通報制度の整備された企業であれば従業員がより安心して働くことができますし、対外的な評価も高まることでしょう。
したがって、内部通報制度の整備を検討することは全ての企業にとって大きなメリットがあるといえます。
ハラスメントの相談窓口、内部通報窓口の設置場所として考えられるのが、企業の社内窓口と、企業の外部に委託する社外窓口です。
社内窓口の場合、設置場所としては総務部や人事部、法務部などが考えられます。
しかしながら、従業員からすると、日々の面識のある相手に相談したり、通報したりすることが心理的プレッシャーとなり、窓口が実効性の無いものとなってしまう事態に陥りかねません。
また、窓口の担当者としても、ハラスメントや内部通報制度についての専門的な知識があるわけでもないため、どのように対応すれば良いのかわからないということも少なくないと思われます。
特に小規模な企業の場合、社内に実効性のある窓口を設けることはなかなか難しいのではないでしょうか。
さらに、社外に相談窓口があれば、その窓口に対しては従業員が実名で相談や通報をするものの、窓口から会社への報告については匿名としてもらうという方法を取ることもでき、従業員がより柔軟に窓口を活用することが可能になります。
以上のような理由から、実効性のある窓口を設置する方法として、外部へ相談窓口を委託する方法が考えられます。
ハラスメント相談や内部通報に関する外部窓口については、弁護士ではない民間会社が委託を受けていることもあります。
しかしながら、弁護士が外部窓口の担当をすることにより、企業は以下のメリットを得ることができます。
弁護士は法律の専門家であるため、ハラスメントに当たるかどうか、法律違反に当たるかどうかなどの法律上のポイントを押さえた上で、相談内容や通報内容を検討することできます。
企業に対しても法律上のポイントを押さえた報告やアドバイスをさせて頂きますので、企業がより適切な対応を取りやすくなります。
弁護士は裁判などの紛争に日頃から対応しているため、仮にそのような紛争に発展した場合のある程度の見通しを検討することができます。
したがって、弁護士以外が対応する場合に比べて、企業がより有益なアドバイスを得られる可能性が高くなります。
相談や通報の相手が社内の人間ではないことは、従業員にとって活用のしやすい点ですが、他方で、見知らぬ人間であることから「本当にきちんと話を聞いてもらえるのだろうか。」という不安を抱いてしまいます。
そこで、法律の専門家である弁護士が窓口対応をすることにより、従業員としても安心して相談することができるようになります。
よくあるご質問として、顧問弁護士とは何が違うのかという点があります。
「当社には顧問弁護士がいるので、顧問弁護士にハラスメントや内部通報の相談窓口を任せればよい。」という考えの企業もあるかもしれません。
しかしながら、顧問弁護士とは、あくまでその企業の味方という立場の弁護士になります。
従業員の立場からすると、社内のハラスメントや不正について、会社側の立場の弁護士には相談しにくいということも考えられます。
そこで、中立的な立場の弁護士がハラスメントや内部通報の相談窓口を担当することで、相談窓口はより実効性のあるものとなります。
したがって、すでに顧問弁護士のいる企業においてこそ、顧問弁護士とは別に、弁護士にハラスメントや内部通報の相談窓口を委託することを積極的に検討するべきといえます。